日本最大の航空会社として、その名を知らぬ人はいない ANA こと全日本空輸株式会社。そんな同社の従業員向けコミュニケーション、業務ネットワークシステムとして活用されている「Olive(オリーブ)」の構築に Google Cloud Platform が選ばれた理由とは?そのシステム開発を主導したメンバーにそのお話をお伺いしてきました。


(取材日時: 2016 年 3 月 17 日)

■ 写真左から
全日本空輸株式会社

空港センター 空港業務推進部サービス開発チーム 長浜史さん
業務プロセス改革室 イノベーション推進部 サービスイノベーションチーム 東真衣さん
空港センター 空港業務推進部 旅客サービスチーム 林原央和さん


■ 利用中の Google Cloud Platformサービス

■ 導入、開発パートナー




ANA で Olive の開発がスタートしたのは 2013 年の春。当時、インターネットやスマートフォンの普及などによって、顧客とのコミュニケーション手法が激変し始めており、お客様へのタイムリーな情報発信のためのシステム作りが急務となっていました。

この際、いくつかの“提案”があった中で、機能面、コスト面で最も魅力的に映ったのが Google Cloud Platform を活用した、パブリッククラウド型のシステム。ちょうどその時期に社内メール環境を Google Apps for Work に移行したことも追い風となりました。取り扱う膨大な量の個人情報をパブリッククラウドで取り扱うことを不安視する声もあったそうですが、同社の厳しいセキュリティ基準もGoogle は難なくクリア。1 年後の本格運用開始を目指して開発がスタートします。

「ところが蓋を開けてみると、わずか半年でシステムが完成。これから実際の運用方法を検討しようと考えていたところだったので逆に慌ててしまったほどです(笑)。また、その作り方もこれまでと全くの別次元。これまでは仕様要件をしっかり決め込んでから作っていくのが普通で、後から追加や変更はできないのが当たり前でした。できあがった後に『こんなはずではなかった……』ということも珍しくありませんでした。ところが Olive に関してはまずは開発会社さんが叩き台となるプロトタイプを数ヶ月で作成し、それを試しながら細かい部分を追加・改修していけたので、最初から驚くほど完成度の高いシステムを構築することができたんです」(全日本空輸株式会社 業務プロセス改革室・東さん)


もちろん運用開始後の機能強化も従来よりはるかにスムーズだったとのこと。今日も空港スタッフからの要望などを元に、専用スマートフォンアプリへのプッシュ通知機能追加など、さらに実状に合わせた改修が行なわれているそうです。

「初期の大きな機能強化で特に印象に残っているのが、Olive 画面上で ANA からお客様宛にお送りした連絡メールを確認できるようになったこと。これまではそれが完全には共有できておらず、例えば遅延通知のメールを見たお客様からのお問い合わせに窓口の人間が即答できないということがあったのですが、この機能が実現して以降はお待たせする時間をぐっと短縮できるようになりました」(全日本空輸株式会社 空港センター 空港業務推進部・長浜さん)



「日常業務で使っている Google Apps for Work と同じ Google の仕組みを使ったメリットとして、統一感のあるユーザビリティが挙げられますね。たとえば Olive に表データをアップしたいときも、使い慣れた Google スプレッドシートの UI で使えるので新しく操作方法を覚える必要がありません。過去情報の検索のしやすさ、賢さも、Google ならではのメリットといつも感心しています。何より一般的な Web ブラウザで社外からもアクセスできるようになったというのが大きい。これまでは空港外でお客様のご案内を行なう際は最新情報を電話で確認するしかなかったのですが、Olive 導入後はスマートフォンの画面上でいつでもチェックできるようになりました」(全日本空輸株式会社 空港センター 空港業務推進部 旅客サービスチーム・林原さん)

なお、一般的に会社の規模が大きくなればなるほど、こういった新システムの導入には時間がかかるもので、現場からの反発も大きくなりがちなのですが、Olive に関してはぐんぐんと利用率が高まっていっているとのこと。まだ導入が始まっていない部署から早く使わせてほしいという声が上がったり、こんな機能を追加してほしいという声も上がってきているそうです。今後は社内だけでなく、関連会社に向けたシステム開放も計画中なのだとか。

「ただし、スタッフが極度に少ない海外空港では Olive への情報入力を簡素化してほしいという声も上がっています。そこで、将来的にこれを音声入力などで行なえるといいな、なんてことを開発会社さんに相談させていただいたのですが、何とそれが決して夢ではないとのこと。近い将来 Google Cloud Platform に追加される機能(編集部注:Cloud Speech API)で実現に近付くそうなので期待しています」(林原さん)





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